2025.01.01MTPプラスチック染色通信
第8回 「MTPプラスチック染色と環境規制について・・・」
今回は、弊社「MTPプラスチック染色」と「環境規制」についてお伝えします。
「MTPプラスチック染色」は、弊社が独自に開発した樹脂専用の染色技術となります。
各種の環境規制に対応できるように開発された染色方法となります。
染色された部品は、あらゆる業種の産業用部品として使用することが可能となっております。
アゾ系有機合成染料(発がん物質を生成する)は使用しておらず、
「RoHS10指令」や「REACH規則」にも該当しない唯一の産業用の染色加工となります。
電気・電子部品で使用する樹脂製品での染色を想定した場合は、
「RoHS」や「REACH」ような環境規制をクリアすることが必須条件となります。
様々な環境規制に対応できる「MTPプラスチック染色」は、長年の弊社の繊維染色技術を基礎に開発されたものです。
さらに、この技術は、弊社オリジナル商品の「MLQプラスチック染色液」にも生かされています。
店舗販売されている「他社製のプラスチック染色液」は、あくまで趣味やDIY用途として製品化されております。
そのため「他社製の染色液」は、MSDSが発行できなかったり、内容物非公開品も多くあるようです。
産業用部品として使用するには、環境規制に対応しているか不明なこともあり、
市販品では、「MSDSの発行は出来ない」「内容物に関しては公開できない」と言われ、
どうにかならないかと、過去に何度も相談を受けたこともあります。
弊社「MLQプラスチック染色液」は、各種の環境規制にも対応しています。
各種環境規制に向けた書類の提出も可能になっております。
そのため、安心して産業用染色部品としてご使用いただけます。
下掲載写真は、弊社染色液にて「鍋釜で染めた物」になります。
小部品や、簡単な色分けで使用することをお勧めしております。
美観品や、大きい成形品、スーパーエンプラなどは、弊社にて専用の染色機で染める事をお勧めいたします。
鍋釜での染色は限界があります。専用の染色機で染色することでより綺麗に染める事が可能です。



上記の染色品写真は、弊社の「MLQプラスチック染色・お試しセット」を使用しました。
お試しセットは、赤・青・黄・緑の4色セットになります。
お試しセットは、様々な樹脂に対応している汎用型ですが、塗装と違い樹脂によって色の発色が変わります。
上記写真(中)は、PMMA、PP、ABS、PC、PA、POM、PBT、PVCを鍋釜同浴で染めた物になります。
上記写真(右)は、3D造形品(PA粉体造形品)を鍋釜で染めた物になります。
上記の色以外も、お試しセットを混ぜることや濃度を変えることで、色の調整をしていただけます。
特定樹脂への希望の色の染色液が必要な場合は、別途オーダー製で配合させていただきます。
ご入用の際は電話やメールにてご相談ください。
2025.02.01MTPプラスチック染色通信
第9回 「MLQプラスチック染色液について・・・」
前回に引き続き、弊社が販売しております染色液について詳しく説明させていただきます。
弊社は、お預かりした成形品を染色にて着色する「プラスチック染色専門」の会社ですが、
簡易プラスチック染色液の販売もしております。それが、弊社が開発いたしました「MLQプラスチック染色液」です。
「MLQプラスチック染色液」は、各ユーザー様の会社などで手軽に樹脂への染色が可能となっております。
「量販店などで売られている染色液」とは違い溶剤を一切使わず配合しております。
染色後は、「産業部品」として使用できることが特徴の簡易染色液となります。
「MLQプラスチック染色液」の特徴を下記にまとめます。
- PMMA、PVC、POM、PC、PA、PBT、PP、PE、各種3D造形品など幅広い樹脂を染めることが可能
- 各種の環境規制に適合しており、「使用後の廃棄染色液は公共下水道にも廃棄が可能」
- 「安全データシートSDS」や「不使用保証書」、「chemSHERPA」などの書類の提出が可能
- 弊社標準カラーの蛍光黄色や赤、青、緑、黄、茶、黒など全12色に加え、ご希望の色に調色したオリジナル染色液も提供が可能
以上のような特徴を備えており、ユーザー様で鍋や釜と加熱道具を用意していただくだけで、
「産業部品」としての簡易染色が可能となります。
注意点としましては、鍋や釜を使った簡易染色には限界もあります。
- 商品は、染色加工を前提として成形されていない
- 色の濃淡や染め残りが出ることがある
- 染色液を混ぜ合わせた場合、色の再現が難しい
あくまで、「簡易」と理解していただいてのご使用をお願いします。
弊社内で染色する「MTPプラスチック染色」は、鍋釜では染色いたしません。
オリジナル開発の自動染色機を使用する染色加工となります。
PPSやPEKKなどのスーパーエンプラは、簡易染色では着色出来ない樹脂も染色可能となります。
また、機械染色を行うことで調色、色の均一性、染め残り無し、再現性(リピート性)も充分備えております。



2025.03.01MTPプラスチック染色通信
第10回 「金属組み込み樹脂の染色について・・・」
バネや金属ピン・ヘリサートなどが組み込まれた樹脂成形品でも、金属に悪影響をあたえず染色することが可能です。
金属ネジ・ナットなどのインサート成形品でも多くの場合、染色が可能となります。
組み込み式の成形品において、染色は樹脂部分のみ染まり金属には影響しません。
染色液は、酸性でもアルカリ性でも無く、ほぼ中性のため、錆びや腐食などへの影響はありません。
もちろん、樹脂、金属ともに強度低下などの心配もありません。
対応が可能な金属の種類は、ステンレス、真鍮、ニッケルめっきなどになります。
アルミ製品の場合は、テストが必要となります。
染色後には、洗浄の工程があり、金属表面の染料はすべて洗い流されます。
金属ピン付きコネクターは2010年から、染色依頼を受けておりますが、まったく問題はありません。
その他の金属組み込み樹脂も錆びや腐食もなく、全く問題はなくご使用いただいております。


2025.04.01MTPプラスチック染色通信
第11回 「染色品の形状や大きさについて・・・」
弊社染色機で対応可能な、「形状」と「大きさ」についてお伝えします。
弊社染色機を使用するMTPプラスチック染色は、複雑な形状の部品を染めることを得意としています。
複雑な形状のコネクター部品から、切削部品、3D造形品などのご依頼が多数あります。
多数の汎用型治具も用意しておりますので、様々な形状の成形品や衝撃に弱い成形品も対応が可能です。
【最小サイズ】は「ペレット」から、
【最大サイズ】は概ね「600mm×600mm×500mm」まで対応可能。
過去実績としましては、
「Φ600mm×T30mm」の円盤状の部品
「500mm×500mm×30mm」のPMMA展示会用ボード
「500mm×400mm×400mm」の3D造形品 などがあります。
【最長サイズ】は、細長い部品やパイプなどは、「1,000mm(1m)」まで対応可能です。
過去実績としましては、
「Φ30mm×1000mm」のPVC、PCパイプ などがあります。
【板状の成形品】は、既存治具にて最大「500mm×500mm」サイズで、数十枚単位での量産が対応可能です。
「385mm×300~600mm」や「350mm×300~650mm」などのサイズの治具も用意しております。
【チューブやコード】は、太さにもよりますが、「数千m」まで対応可能です。
チューブなどは内側を染めず、外側だけを染色することが可能です。
染色方法としましては、ホースを巻いたような(カセ巻きの状態)で染色します。
しかし、弊社染色にも苦手な形状があります。
1mm以下のシートやフィルムなどへの染色は苦手とします。
現状では専用の治具がない事や、染色機がシート状の物に対して対応可能に設計していないためです。
染色自体は可能ですが、大きさや枚数など制限も多く課題があります。
量産などに対応する場合は、専用の治具の作成が必要になります。



2025.05.01MTPプラスチック染色通信
第12回 「汎用樹脂の染色について・・・」
今回は、アクリル(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル(PVC)、アクリルブタジエンスチレン(ABS)などの汎用樹脂の染色についてお伝えします。
【アクリル(PMMA)の染色】
- 汎用樹脂の中では、アクリル樹脂の染色依頼は多くあります。
- 射出成型品、切削成形品、板など形状は多種多様です。
- 透明なアクリルを染めた場合は、透明感のある発色が特徴です。
- 注意点としましては、長期間の野外使用では退色があることです。
【ポリプロピレン(PP)の染色】
- 射出成型品、切削成形品、板など部材は多岐にわたっております。
- 元の樹脂がナチュラルの場合は、ほとんどの色に染色可能です。
- あまり濃い色には染まらない場合があります。
【塩化ビニル(PVC)の染色】
- 切削成形品やパイプ、チューブなどの依頼が多くあります。
- 水道管(グレー色)の切削成形品やパイプなども染色が可能です。
- チューブ(軟質塩ビ)の場合は、内面を染めないで外面のみ染める事が可能です。 そのため、薬品などを通す場合にも問題はありません。
- 染色後の水道管パイプを長期に野外使用の場合は、退色にご注意下さい。
【ABS樹脂の染色】
- 染色が不得意な樹脂の代表となります。
- ABSの「射出」成型品染色後に表面がくもり、外観に影響を与えることがあります。
- ABSの染色は、成形時のガスの発生による問題で、染色の課題の一つになります。
- しかし、「切削」成形品のABSについては、上記のような心配もなく美しく染まります。
プラスチック染色の長所、短所を生かした製品づくりが大切となります。



2025.06.01MTPプラスチック染色通信
第13回 「プラスチック染色の特殊な実施例について・・・」
今回はプラスチック染色や加工のなかで、染色の特徴を生かした特殊な実施例を取り上げます。
① 紫外線の内部透過を防ぐため黒色に染色する実施例
樹脂部品によっては部品内部まで紫外線が届くことが問題になる場合があります。
そのため部品仕様に不具合が出るため(内部を流れる紫外線硬化樹脂などが固まる、など)、
部品の外側を黒色に染色し、同時に紫外線吸収剤も添加吸収することで、不具合は解消されました。
② 染色されたプラスチック部品は、その表面から少しだけ内部に染料が浸透しています。
その性質をうまく利用した実施を下記に記載します。
【例1】
染色後に表面を削る事で樹脂本来の素地色を出すことで、文字や記号を表現する事が出来ます。
染色部品は塗膜を作らないため、異物混入の防止に医療現場のネームプレートとして採用されています。
【例2】
染色したプラスチック部品の表面が摩耗すると、元の樹脂の素地色が現れます。
そのことを利用し、部品の交換時期の目安となる仕様にしています。
③ アクリル部品のハードコート歩留まり改善の向上
染色の技術ではないのですが、弊社の特殊な薬剤を使用することで加工をします。
加工後のアクリル樹脂部品のハードコート歩留まりの改善が向上します。
以上、実際に採用されている実施例を紹介しました。

